
標高2500mを超える稜線歩きでも、30℃を超えるようになりました。
今年2025年はさらに強い日差しを感じるようになり、夏山登山はかなり危険な行為になりつつあると感じてます。
2025年の夏は山岳遭難が増えていますが、熱中症によるものでは思う事例もあります。
熱中症まで行かずとも、脱水により、判断力が鈍り、吐き気や眩暈、脚のけいれんなどが生じます。
単なる滑落などでなく、脱水による体調不良が原因である可能性もあります。また、高所では高血圧や脱水になりやすいため、既往歴がなくても心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすいといわれています。脱水により発症し滑落したという可能性もあります。
そういったリスクがある夏山登山ですが、リスクは事前に回避することができます。
酷暑の中でも快適に山に登るには、脱水、熱中症にならないように予防することが大事です!
ではどうやって予防すればよいか⁈

黒色系の帽子や服は熱中症のリスクが高い
今夏の北アルプスでは、気持ち悪くなった方、顔を真っ赤にして歩いている方、バテたと言ってベンチで横になっている方は、みなさん黒い帽子をかぶっていました。
黒い帽子、黒いズボン、黒いアームカバーを身につけて、気分が悪いと訴えてきた方には、とりあえず黒い帽子を被るのをやめてもらい、白い手ぬぐいをかぶってもらいました。山小屋で冷たいものを飲んで30分ほど休むと、体調が戻り元気に歩くことができました。
黒など濃い色は熱を集めます。特に酷暑の中を歩く際に頭部の帽子が黒色であることは非常に危険で、熱中症のリスクが高まりますから、絶対にやめた方が良いです。
黒系の光を集める色の服装は避けるようにしたいですね。白やグレー、薄い色の服装や帽子を選んで熱中症を予防しましょう。
また、できるだけ、風通しがよくなるように、服装に気をつけることも大事です。首に巻きつけたタオルや、厚手の帽子、手袋などは、身体に熱がこもりやすくなることもあるため、時々外して対応するようにしましょう。
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さらに、黒はハチやブヨに刺されやすいため、黒い帽子、服、手袋、タイツなどは避けた方が無難です。
黒いタイツを着用しても、タイツの上からブユに刺されるため、タイツの上からテーピングや手ぬぐいを撒いて対応されている人もいました。
黒い手袋をした方が蜂を追い払おうとし、さらに蜂が攻撃してきたこともありました。
とくに雪解けの登山道はブユが大量発生していることが多いので、予防が大切です。
登山中の水分摂取量は知ってますか?
1時間に摂取する水分量は約200mlです。(体重50キロの場合)これは、体重50キロの方の量なので、自分の体重と比較してプラスマイナスで考えてもらうとよいです。(1時間で必要な水分量=体重×4、体重70キロなら280ml)
5時間の登山なら、1時間量を5倍すればよいので、体重50キロの方は最低1リットルですね。また、その日の暑さによっても調整が必要です。
また、山小屋に到着してからもしくは、下山後に、その日に必要だった水分量を計算し、不足分はその日のうちもしくは寝る前までに摂取しておくことが大事です。ビールやコーヒーは水分量に含まれないため、その分はさらに同量の水分を摂取することが必要です。そうすることで、翌日の体調不良を回避してまた元気に歩き出せます。
水分摂取だけではダメ。塩分摂取と電解質バランスを大事に。
数年前までは、しっかり水分摂取を行い、適度に行動食をとっていれば大丈夫でした。しかし、今夏は特に、それだけでは体内の電解質バランスが不十分になってきているのを感じます。低ナトリウム血症の予防が必要になってきます。
2025年では、水分は水だけではなく、確実にポカリスエットの粉末などを利用して飲料をつくったり、塩分タブレットを休憩ごとに摂取するようにしています。同行者も体調を維持できるように、以前より休憩を取るタイミングを早めにして対応し、水分摂取と塩分摂取をしていただいています。
塩分を含む食品を積極的に選び、山に持っていくことも大事です。
しっかり飲んで食べてれば遭難しない
体重50キロの人の場合、水分摂取は1時間200mlと伝えましたが、カロリーも同じ計算で、1時間200キロカロリーです。
※体重×4で1時間に必要な摂取量になります。
とにかく遭難しないようにするには、歩ける状態を維持すること、そして判断力を維持することが大事です。
そのために、1時間あたりの水分とカロリーをしっかり計算しながら摂ることが何より大事です。
歩いている時に、体調がなんとなく変だな、気少し気持ち悪い気がする、ちょっと気が焦ってるな、脚がつりそう、などという時は、必ず立ち止まり、歩いてきた時間と水分摂取量とカロリー量が合っているか考えてみてください。
早めに対応することが大事です。救助要請せずに元気に歩けるようになりますよ。
うちわ 日傘
熱中症予防に、うちわや日傘も有効です。特に休憩中は、日影がなければしっかり休むのに効果的ですね。
うちわは、送風するのには最高です。ザックの背中側に忍ばせておけば場所もとりません。
熱中症気味になった仲間を休憩させるときにも、効果的な送風の道具として有効です。
道をあける時は山側で待っていてほしい
熱中症と関係ありませんが、、
最近気になるのは、ほとんどの方が、崖側で止まって道をあけてくれることです。先日の登山では、9割くらいの方が、崖側で待っててくれました。ルールが変わったのかと思うほどです。
譲ってもらった登山者が少しふらついてぶつかったりしたら、、待ってる人が暑くてぼーっとしてたら、、道を譲って崖側で待っててくれた人は崖下に堕ちますよね。
堕ちたくない人は、山側で待って道をあけてほしいです。
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