ハチローさんにお会いしたのは、ハチローさんが南伊豆のシーカヤックでの事故で亡くなられる数ヶ月前でした。
アイスクライミングのつらら公園で泊り込みで管理をしている時に、ハチローさんが手伝いに来てくださり、除雪機の使い方を教えてくれたり、気づけば黙々と除雪をしてくれていました。
この本で奥様が書かれている「鳩が豆鉄砲を食らったような」顔で怒鳴り散らすハチローさんの姿しか知らず避けてきたというガイド仲間は、そうではないハチローさんと接して、とても良い人だ、と感激していた程です。
夜はハチローさんがコッヘルで作ってくれたキムチ鍋を囲んで小宴会。仲間との関係や、礼を尽くすことの大切さを熱く語っていました。とても熱く、純粋で、あったかい人、もっともっと多くを語りたい人でした。
この本では、穂高での近年の山岳レスキューについて具体的に描かれています。まさに漫画岳のような、もしくはそれよりリアルな遭難救助内容を知ることが出来ます。
多くの命を救助したハチローさんは、山で命を落とすなと多くの登山者に訴えていたようです。それでも、山を熟知した仲間が山で亡くなる現実を前に、「そうでしか、あいつはいきていられなかったのだと。それが死と隣り合わせの行為であったとしても。」と心を整理させようとしていたのでしょうか。
やはり、山という存在は、愛さずにはいられない、懐が深く広く、ちっぽけな人間にとって、偉大で大きすぎるものなのだとも改めて感じました。
1人でも多くの方が、この本を読んで、救助現場の大変さや、残された家族の想いや、宮田八郎さんという人間の生き様を記録してほしいなと思いました。
by comic kumiko
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